暑さが続く中にも朝夕に秋を感じるこの頃。夏バテぎみの体をいたわる野菜を食べよう、ということで今回はかぼちゃを選んでみました。(2012/09/09作成)
品目:カボチャ Pumpkin
植物学上の分類:ウリ科カボチャ属
原産地:中央アメリカ(東洋種、和種)
品種:黒川南瓜
主な産地:石川県、宮崎県など
出回り期: 主に7~10月(石川県)
ゴツゴツとした外観、やや小ぶりで上から見るとキクの花のような美しい形。黒皮南瓜(かぼちゃ)は、近頃では少なくなった東洋種のかぼちゃです。水分を多く含み、ねっとりとした食感が特徴。一般に多く出回っている西洋かぼちゃは「栗のようにホクホクとした食感」と形容されることが多いですが、東洋種の黒皮南瓜はむしろ、より「ウリ」的な性質を持っていると思います。切ったときの、すいかやきゅうりとも共通する独特の清々しい香り、切ると同時につゆが滲み出るようすは、かぼちゃはウリ科の野菜である、ということを再認識させてくれます。
話が前後しますが、かぼちゃの種類は中央アメリカ原産の東洋種、南アメリカ原産の西洋種、ペポかぼちゃ(ズッキーニやハロウィンのかぼちゃなど)の大きく3つに分類されます。東洋種(いわゆる日本かぼちゃ)は16世紀にポルトガル船によってもたらされました。東洋種は日本の気候に適し、栽培は各地に広がりましたが、19世紀に西洋種が北海道に導入されると、食生活の洋風化や甘みが強くホクホクとした食感が好まれて、またたくまに西洋種が主流となりました。そのようにして今や姿を消しつつある日本かぼちゃ。「会津」「菊座」「備前縮緬」「鹿ケ谷(京野菜)」など伝統野菜としていくつかの種類がありますが、今やとても高価な野菜となっています。
今回ピックアップした黒皮かぼちゃは石川県産。固そうに見えますが、包丁を入れてみると案外簡単に切れました(果肉は西洋種よりやわらかい)。日本料理店などで使われることが多い日本かぼちゃですが、煮崩れしにくく、だしの味を含みやすいため、まさに和風の煮物に適しています。中をくり抜いて詰め物をし、蒸す料理などにもよいようです。
●栄養素
β-カロテンを600mg以上含む緑黄色野菜。粘膜を丈夫にしたり、免疫力を高める効果が期待されています。また、ビタミンB群、ビタミンC、カリウム、食物繊維などもバランスよく含みます。体を温めるともいわれ、冷え症の人や夏に冷たいものを多く摂った体にはおすすめです。
●保存方法
丸ごとなら風通しのよい涼しいところで1~2カ月くらいは保存可能。カットされたものは切り口にラップをして冷蔵庫で保存します。2、3日で食べきれないときは調理して冷凍保存を。
●ひとこと
まるごと売られているかぼちゃを見掛けることが少なくなりました。特に西洋種のかぼちゃは大きいのでまるごと買っても多すぎる感じだし、だいいち固くて並みの包丁じゃカットできない!その点、東洋種のかぼちゃは小ぶりで、皮は固いものの西洋種よりは切りやすい気がします。でも、いずれにしても、東洋種、西洋種を1個ずつ買ったため、かぼちゃ三昧の幸せな日々を送ることになったのでした…。
☆かぼちゃの旬
一般的に野菜は採れたてを食べるのが一番ですが、ことかぼちゃに関しては別。かぼちゃは貯蔵することでデンプンが糖に分解されるため、収穫後1カ月くらい経たほうが甘くなるといわれます。栄養価が高く「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」ともいわれますが、夏に収穫するかぼちゃですからそれだけ貯蔵性の高い野菜だったということなのでしょうか。幼少期、お盆には必ずかぼちゃと切り昆布の煮物が食卓にのぼったため、長らくかぼちゃはお盆のイメージでした。地域的な習慣で、その由来はわかりませんが、晩夏の夏バテぎみの体を温めエネルギーを補うという意味だったのかなと想像しています。
☆かぼちゃ選び
よいかぼちゃの選び方。その1)ヘタがしっかりと乾燥しているもの、その2)皮が固いもの、その3)皮が白い粉を吹いているもの(東洋種)、その4)ずっしりと重みのあるもの……などなど。西洋種はカットして販売されていることが多いので、果肉の色の濃いもの、種のふっくらとしているものを選ぶとよいと思います。