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野菜たちの個性や魅力を探り、特性を生かしたおいしい食べ方を見つけよう!

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寒締めちぢみほうれんそう

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葉っぱが縮れて妙に横広がり。不細工な姿だけど…。近頃よく見る「寒締めちぢみほうれんそう」に注目しました。(2012/02/05作成)

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品目:ほうれんそう spinach
植物学上の分類:アカザ科ホウレンソウ属
原産地:西アジア
   (トルコ東部~イラン北部一帯)
主な生産地:東北地方、茨城県、栃木県ほか
出回り期:冬(12月~2月)

濃い緑色に縮れた葉。いわゆる普通のほうれんそうとはやや趣の違うほうれんそうが冬場(12~2月)八百屋さんの店頭に出回っています。「寒締めちぢみほうれんそう」とか「寒締めほうれんそう」という名前で販売されるこのほうれんそうは、寒い時期にあえて寒さにあてて栽培されるほうれんそうのこと。「寒締め栽培」という栽培方法によるもので、見た目のゴツさと正反対に甘くてえぐみが少ないのが特徴です。

そのわけは、寒さにあたることで作物自身が凍結を防ごうと葉を引き締め、体内の糖分が凝縮されるため。寒さが厳しければ厳しいほど甘みは増し、糖度がフルーツなみに10度を超えることもあるのだとか。

厚みのある葉は一見硬そうに見えますが、とても繊細な野菜なので茹でるときはさっと短時間で。寒締めならではの甘みを味わうにはおひたしや和え物、味噌汁などシンプルな調理法がいちばんです。ほうれんそう独特のアクが苦手という方でも、寒締めほうれんそうならえぐみを感じずにいただけるのでは。

また、ほうれんそうはバターやチーズと相性がいいので、バターソテーやキッシュなどシンプルな洋風メニューもおすすめです。

●ほうれんそうの栄養素

ビタミンA・C、カロチン、カリウム、鉄などを多く含む栄養価の高い野菜。貧血の予防に効果的。食物繊維が胃腸の働きを整えてくれます。周年栽培されていますが栄養的には冬のものがよいようです。特に寒じめ栽培は糖分ばかりでなく、ビタミン類などの栄養素も凝縮されて高まっています。

●保存方法

葉が乾燥しないようポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存し、2~3日で食べきりましょう。長く保存するときはさっと茹でて水気を絞り、小分けにして冷凍保存を。

●ひとこと

ハウスでぬくぬくと育っていたのに、突如寒風にさらされてちぢみあがるなんて!なんだかかわいそうな気もしますが、ほうれんそうにせよ、トマトにせよ厳しい環境下で頑張って育つ野菜は甘みが凝縮されるんですね。

今回は青森県産(八戸)と栃木県産(小山)、岩手県産の寒締めほうれんそうをいただいてみました(栃木のものは露地栽培でした)。茎を食べるとその甘みがよくわかります。

☆寒締め栽培

「寒締め」とは作物が寒さに耐えるため葉に糖などを蓄える性質を利用して、甘みや栄養価を高めるため収穫間近にハウスを解放してわざと寒気に当てる栽培方法。1990年代初めに東北農業研究センターで技術開発されました。生産は東北地方や高冷地が中心でしたが、現在は全国に広まっています。寒気にさらされたほうれんそうは株が開いた状態になって葉が厚く縮れ、アミノ酸含有量やビタミンCが増えるほか、野菜に含まれる硝酸やえぐみの元、シュウ酸の含有量が減少するともいわれています(種類にもよるらしいですが)。「寒締め栽培」は小松菜やレタスなどでも行われているようです。

☆ほうれんそうの種類

現在出回っているほうれんそうは大きく東洋種と西洋種、交雑種に分類されます。東洋種は16世紀中頃に中国から伝わったもの。ギザギザした葉でアクが少なく甘みがあり柔らかいのが特徴です。一方西洋種は江戸末期にフランスから導入され、肉厚で丸みのある葉が特徴。日持ちはしますがアクが強いのでおひたしには不向き。現在は東洋種と西洋種のいいとこどりをして交配した交雑種が主流となっています。また、地を這うような平たい形で葉がちりめん状になる縮れ系品種もあります(西洋種のひとつで寒締めほうれんそうとよく似た特徴を持つ)。寒締めほうれんそうの産地、青森県では「ちぢみほうれんそう」といわれるこの縮れ系と立ち性の品種の両方で寒締めほうれんそうが生産されているようです。