この季節、スーパーや八百屋さんの店先には柿が山盛りで並びます。ざっと見ただけでも富有、次郎、刀根柿、平核無(ひらたねなし)など種類もさまざま。さて、どれを選びましょうか――。ということで初回は堂々とした雄姿に惹かれ、愛知県産「次郎」を取り上げることにしました。(2011/11/27作成)
名称:次郎柿 persimmon jiro
分類:カキノキ科カキノキ属
原産地:中国、日本
次郎柿の主な産地:静岡県、愛知県
出回り期:10~11月
カキの歴史は古く、『古事記』や『日本書紀』などの文献にも登場することから8世紀頃には栽植されていたと考えられています。全国各地に古木が残り、地方品種は1000種類以上。
柿には甘柿品種と渋柿品種があり、それぞれ完全甘(渋)柿、不完全甘(渋)柿に分類されますが、今回ピックアップした「次郎」は完全甘柿。
遠州森町(静岡県)原産で、現在は主に静岡県、愛知県で生産されています。甘柿の代表格である富有柿よりやや大きい扁円形で濃い橙色。果汁は少なめでコクのある甘みとカリリとした硬めの歯ごたえが特徴です。
●栄養素
ビタミンC、カロチン、カリウム、タンニン、食物繊維などを豊富に含み、風邪や生活習慣病の予防、美肌効果などが期待されています。
また、タンニン(渋みのもと)には血液中のアルコールを体外に排出する働きがあり、二日酔いにもよいとのこと。お酒を飲んだ翌朝はジュースにしていただきましょう。
●食べ頃と保存方法
室内に置いて表面の硬さが少しゆるんだら食べ頃。長持ちさせたいときはポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。硬いものはりんごと一緒にしておくと柔らかくなるとのこと。りんごの発散するエチレンガスが追熟を促すそうです。
●ひとこと
1個230g程度で夕焼けのような色がとてもきれいな柿でした。スーパーで6個入499円を購入。かつて実家の庭にも次郎(らしき)柿があり、毎年たわわに実をつけていたことを思うと、自然の恵みが庭にあるってよかったなとしみじみ思います。
☆次郎柿の由来
江戸末期、森町村(静岡県森町)の松本治郎なる人物が太田川の川原で見つけた柿の幼木を自宅に植えたのが始まり。その後火事で焼失したものの、柿は再び芽を出し成長して、焼失前より甘く豊潤な実をつけたとか。次郎柿原木は静岡県の県指定天然記念物として保存されています。
☆甘柿と渋柿
成熟すると樹上で果実の渋みが抜けるのが甘柿、熟れても渋いままなのが渋柿。果実に含まれるタンニン物質が成長過程で固まらないため渋みを感じるそうです。甘柿でも種子の有無によって甘くなったり渋くなったりする不完全甘柿があります。渋柿は干し柿にするか、炭酸ガスやアルコールで渋抜きをします。富有、次郎は甘柿。渋柿には刀根早生、平核無、西条、愛宕などがあります。
☆柿いろいろ
愛知県では次郎のほか筆の穂に似た「筆柿」(不完全甘柿)もあります。また、先日エッと目を引く巨大な柿を店頭で見かけたのですが名前は「富士柿」とありました。愛媛の特産で実は渋抜きされた渋柿。とろりと熟した果実をスプーンですくって食べるのがよいとのコメントがついていました。